もう君がいない
「うわっ!すごーい!釣れた〜!」
「なかなかでかいな、こいつ。」
蓮が釣り上げた魚は、私が想像してたよりも大きくて立派だった。
蓮は、魚の口から針を取ると、水の入ったバケツに魚を入れた。
「これなんて魚なの?」
「鮎だろ。」
「鮎?鮎ってあの塩焼きにする?」
「ああ。」
「そうなんだ〜!すごいじゃん、蓮!」
さっきまで一人で悶々としてたのが嘘みたいに、魚が釣れた嬉しさで、私は一人盛り上がっていた。
「あっ、おい!かかってる、茉菜のやつ。」
「えっ?うそ!」
「巻いて引き寄せろ。」
「え〜、ちょっとなにこれわかんない!無理無理!助けて〜!」
釣りが初めてだから、もちろん釣り上げるのも初めてで、私はちょっとしたパニック。
すると、、
「こうやって、急ぎすぎないで回せばいい。」
また、蓮が後ろから私を抱きしめるようにして、私の手を持ちながら一緒に巻いてくれた。