相棒の世界
***
「……っ」
俺は唇を強く噛み締めていた。
噛み締めていないと、胸の奥にたまっていた何かが飛び出してきそうだった。
「アルバート…グスッ…許してくれ……」
ゼイルの手は温かかった。
ーーー父親の手だった。
「アルバート、こんな人殺しでもな…
一つだけ…人生で学べたことがあったよ…」
ゼイルは俺から手を離すと、震えながらも俺の頭にそっと乗せた。
そして、ゆっくりと撫でた。
「どんな人殺しでもなーーー
心から愛している奴はーーー殺せないんだ」
『死人を殺すなんて楽しくないだろ?』
お前を絶対に殺したくなくて、
あんな嘘をついてしまった俺はーーー
とんだ大馬鹿者だーーー。