相棒の世界
ーーー再びフードを被り、俺とニカは森を出た。
「スタ、スターーー…」
草を踏みしめる音が、なんだか遠くに聞こえる。
「………っ」
正直に言えば、俺はとてつもない悲しみに襲われていた。
唇を噛み締めていないと、どうかしてしまうのではないかと思った。
大事な家族がーーー死んだ。
たとえ血が繋がっていなくとも、その事実は紛れもない真実だったーーー。
『愛してる…アルバート』
ーーーだが、深い悲しみの中には少しばかりの清々しさがあった。
俺を心から愛してくれている家族がいた。
ーーーゼイルがいた。
これもまた、俺に残された真実だった。
「ーーースタッ」
俺は足を止めた。
そして、後ろを振り返る。
ゼイルが俺を見つめているような気がした。
「…兎、大丈夫か?」
ふと、ニカが袖を引っ張ってきた。
「ーーーああ、大丈夫だ」
俺は再び歩き始めた。
悲しみに浸りたいところだがーーー
俺にはやることがある。
ーーー袖を掴んだまま歩くニカ。
俺はこいつをーーー
このクソガキをーーー
守らなければいけないーーー。
お前がやってくれたようにな、ゼイル。