相棒の世界
10. 北の森へ
ーーーあれから3日が経っただろうか。
俺たちは町を無事脱出すると、さらに北にある町へと進出した。
ガイドンの人の良さで、泊まる場所には困らなかった。
町の人々は、俺たちを心良く迎え入れてくれたのだーーー。
「兎…」
「なんだ」
「こんな優しい人たちが存在するのにーーー
どうして世の中はこんなにも残酷なんだ?」
「……っ」
とある宿の部屋の中、俺は窓枠に座って月を見上げた。
もちろん月は見えないが、孤独な光を感じることはできた。
「優しい人が存在するのに世界は残酷だ、という言い方は少々間違っている」
『ハァ、ハァ…殺す…!』
『お前はーーー生きているんだ』
「ーーー残酷だからこそ、
優しさが優しさに見えるんだ」
「……っ」
ニカは黙り込んだ。
意味は分かっているようだった。
「ふっ、だからって世界が残酷であってほしいとは一つも思っていない」
俺は窓枠から立ち上がると、ニカが座る椅子の元へゆっくり歩いて行った。
ニカはーーーどこらへんだ…?