相棒の世界




「ジョーク…?」



「気にするな」




俺は腰を抑えながら立ち上がった。




「あ、まだ…!」



女性が差し伸ばしてきた手を、俺は自分の手で遮った。



「平気だ。もう慣れている」



「あ…」




俺は腰を叩きながら後ろへと反らせた。



いくら丈夫な体をしていたって、あんなに高いところから地面に叩きつけられては痛めるのも当然だ。






「あの…!」



ふと女性が先ほどより大きな声を挙げた。



「…ありがとうございました!」



「っ!?」



女性は俺に頭を下げているようだった。



下げたまま、一向に頭をあげようとしない。





「…っ…そんなのはいい。
頭は上げといたほうがいいぞ」



「え…分かったのですか?」



「なにがだ」



「私が…頭を下げていることです」



「…っ!」





女性は俺が盲目であることが分かっているようだった。



いや、そんなのは屋敷を出る前から知られていたことではないか。




なにせ自分の視界を、頭痛がするほど俺に送りつけてきたのだからーーー。






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