相棒の世界
「そうか…」
それなら納得が行くと思った。
あんな父親が人を心良く迎え入れるはずがない。
迎え入れるどころか、きっと俺と母親にしたように投げ捨ててしまうだろう…
「可哀想な主人だ」
「え?」
ふと女性は顔を上げた。
「人を信頼することができず、怯え切り捨てることしかできない。
ーーー哀れすぎる人生じゃないか」
全てお前がしたことだからな。
自業自得だ。
そう心の中で付け加えた。
「…そうですね、哀れです」
女性は呟くように言った。
「お前は奴隷だと言っていたが、出身はどこなんだ?
助けてくれた礼だ。
できることなら送り届けてやりたい」
「あっ…」
女性は一度声を挙げると、すぐに口をギュッと結んでしまった。
「家はーーーもうありません」
「…っ」
「家族もどこへ行ったか分かりません」
「………」
まるで自分を見ているような気がして、同情の気持ちが溢れ出てきた。
何か…できないだろうか……