相棒の世界
「助けて頂いただけで十分です。
本当にありがとうございました。
ーーー私はもう大丈夫です。
ここは屋敷からそんなに離れていません。
すぐに追っ手が来るでしょう…
ーーーはやく逃げてください」
「……っ」
女性の発言に、俺は唇を噛み締めた。
こいつはーーー自分を犠牲にするようなことしか口にしない。
「ーーーそんな言葉を受けて、俺が喜んで逃げるようなやつに見えるか?」
「え…?」
俺は女性の腕をとった。
「…っ!」
強く、強く握るーーー。
「俺は目が見えない。
だがこうやってお前の腕をすぐにとることができる。
ーーー盲目の俺にだってそれなりのできることがあり、それなりの意地があるんだ。
俺は自分でも認めるほどの意地っ張りだ。
そのせいか俺は、逃げろと言われてしまえば逆にその場にとどまってしまうんだ。
これはもうどう足掻いたって治らない癖だ」
ほんのりと笑みを浮かべた。
女性は少し戸惑った様子になる。
「ーーーそれはジョークというものですか?」
「っ!」
女性の思わぬ返事に、俺は目を丸くしてしまった。
そしてーーー
「ふっ」
思わず吹き出してしまった。
「残念なことに今回は違う」