相棒の世界
「あの…兎さん」
「っ?」
焚き火の向こう側にいるミラが、ふと俺の名前を呼んだ。
初めて呼ばれたということもあり、鼓動が速くなっていった。
「明日になったら、早くここを出た方がいいと思います」
「…なぜだ?」
「…屋敷の主人は私の力を大いに必要としています。追ってこないわけがありません」
「なるほどな…」
ミラを連れてきてしまったことで、追っ手の数も増やしてしまったわけか。
とんだ茶番劇だな。
「ーーー大丈夫だ。
俺がなんとかする」
「あ…」
「もう寝ろ。明日は早く出発するからな」
「は、はい…」
俺はそのまま体を横にし、目を瞑った。
疲れがたまっていたからか、すぐに眠りにつくことができた。
ーーーはやく、占い師のところにたどり着きたいもんだな。
はやく鷹目の声をーーー
聞きたいもんだな…
その思いだけが俺の頭の中をぐるぐると回っていたのだった。
ーーーミラが顔を赤らめていたことに、俺はこの時気づくこともできなかった。
そして、
とてつもなく不安な顔をしていたことにもーーー