相棒の世界
「ハァ、ハァ…」
俺は剣を両手に持ったまま、ただ呆然と立ち尽くしていた。
こんなことは滅多にないことだった。
敵を全員殺してからも、ずっと剣を振り続けているなんてーーー。
「……っ」
ガイドンの言っていた言葉の意味が理解できたような気がした。
憎しみの心はーーー人を暴走させる。
「う…うぅ…」
ビクッ!
ふと近くから唸り声が聞こえてきた。
まるで地獄に落ちた悪人どもが出すような、地響きのような苦しみの声ーーー。
俺はこの声の主を知っていた。
ーーー父の声だ。
父も暗殺者たちと共に俺を殺しにきていたのか。
そう考えると、益々憎しみの心が溢れてきた。
ギュッ…
剣の柄を固く握り締めた。
ーーー殺してやりたい。
母と俺にしたようにーーー
お前をこらしめてやりたいーーー!!
タッ、タッ…
俺は声が聞こえる方へと足を進めた。
「兎、どうするつもりだ」
「……」
聞こえてくるニカの声も全てを無視して、ただ父の声が聞こえる方へと向かって行く。
両手の剣の柄を、さらに固く握る。