相棒の世界
「ハァ、ハァ…」
俺が剣を振り下ろした場所のすぐ隣で、父は息を切らしていた。
「……サッ」
俺は地面に突き刺した剣を抜くと、父の目の前で膝をついた。
「いいか、欲まみれになった主人様よ」
ーーーグッ!
俺は勢いよく胸ぐらを掴んだ。
「んぐっ!」
喉を締め付けられたような声を出す父。
俺はゆっくりと口を開いた。
「盲目であろうとなかろうと、世界で一番恨んでいる者の場所は分かってしまうものだ。
お前はーーー母と俺を捨てたのだからな」
「っ!!」
父は俺が誰なのかを悟ったようだった。
そしてーーー
「アルバート…なのか…?」
そう小さく呟いた。
「捨てた子供の名をたやすく呼ぶな」
俺は胸ぐらをさらに持ち上げた。
そして父の顔を自分の目の前に寄せ、静かに言った。
「俺はお前を腹の底から恨んでいる。
ーーーだが殺さない。
お前の肩を持つ者はきっとこれから現れないだろう。お前はそれくらいのことをしたんだ。
その中をもがきながら生きていけ。
苦しんで苦しんで俺と母が味わった苦しみの分の償いをするんだ。
ーーー分かったな」
「……っ」
俺は父を投げ捨てると、そのまま背を向けて歩き出した。
背後の父はーーー何も言わなかった。