相棒の世界
鷹目は微笑むと、消えかけた声で言った。
『一つだけ道を示しといてあげよう…
ハカゼの家のすぐ近くに集落がある…
そこにシーナという女がいるはずだ…
ーーー俺の最愛のパートナーであって…ニカの母親だ…』
「…ニカの母親…!?」
『ははっ、ああそうだ…
その女を探すんだ…
全てが分かるはずだ……
大丈夫だ、兎…』
ーーー俺はお前の中にいる。
寒さは和らぎ、だんだん周囲の音や匂いが戻ってきた。
もう鷹目はーーー
その鏡の中にはいなかった。
「あーもう限界だぁ…」
ハカゼは腰掛の背もたれに寄りかかった。
「やっぱりこれは年寄りにはきついねぇ…
手が震えてしょうがなかったよ…」
俺はずっと下を向いて、口を閉じていた。
単純にーーー鷹目が行ってしまったことが悲しかったのだ。
「ふっ…何か聞き出せたかい?」
ハカゼは微笑みながら俺に訊いてきた。
「聞き出せたというか…」
あいつは俺をーーー
終始安心させようとしていたな…