相棒の世界
「ーーーはっ!」
部下たちが用意したテントの中で、黒犬は目を覚ました。
身体中は汗でびしょ濡れになっていた。
「ハァ、ハァ…」
夢、か…
黒犬は傍に畳んで置いた黒いスーツを羽織ると、犬の仮面を被った。
テントから出ると、そこには跪いている部下が一人。
「おはようございます、黒犬様…」
「おはよう」
「よくお眠りになられましたでしょうか」
「…そんなわけがないだろう」
「…っ…失礼いたしました」
黒犬の心の中にはあるトラウマが残っていた。
それは夜になると必ず彼を襲ってくるのだ。
「ーーー俺はきっと、死ぬまで深い眠りにはつけないだろうな」
黒犬はそう呟くと、部下の真横を通ってまっすぐに森の中へと歩いていった。
「黒犬様、どちらへ…!」
「っ…」
黒犬は立ち止まると、前を向いたまま言った。
「決まってる…
ーーー兎のところだ。
お前も一緒に来い」
まだ奴のことは殺さない。
その代わりにーーー
大事なものを奪ってやる。
弱れ…
もっと弱るんだ…兎……!
ーーーーーーーーーーー………
ーーーーー……