相棒の世界
「鼠か、久しぶりだな」
「黙れ…」
ガイドンの声は今までに聞いたことがないほど低くなっていた。
恨みがこもった恐ろしい声だ。
「ふっ、その様子だと俺はものすごく恨まれているらしいな…
ーーーだがあれは事故だ。
俺のせいじゃない」
「…っ…お前は本当に根っこから腐った人間だな!」
「はっ、勝手に言っていろ。
その場から動きさえしなければ構わない。
ーーー兎!」
急に俺の名を叫ぶと、黒犬は淡々とした声で続けた。
「俺はこの鷹目の娘を貰う。
返してほしければ3日後の夜に『記憶の泉』まで一人で来い。一人だからな。
もし来なければこの娘は俺の手で殺す、分かったな」
「っ…!」
身体中から汗が吹き出てきた。
そんなくだらない駆け引きをして、こいつは一体何がしたいんだ…
「…兎……」
ふと、震えるニカの声が聞こえてきた。
「…私は大丈夫だ…私を信じろ」
「っ…ニカ!」
ーーーカチャッ
俺が足を一歩前に出そうとすると、はたまた銃を突きつける音が聞こえてきた。
「ちっ…くそっ…」