相棒の世界
「どうしたんだい坊や」
「っ!」
ふと聞こえてきたしわがれ声に、俺は顔を上げた。
見るとそこにはーーーガタイのいい大きな体をした1人の老人が立っていた。
「可哀想にねぇ…」
俺の目を見た途端、その老人は悲しげな表情で言った。
「こんなところに置き去りにするなんて…」
俺は老人を、目を丸くしてひたすら見つめていた。
あの姿形がとてつもなく恐ろしかったのを覚えている。
「そんなに怖がらないでおくれ」
老人は俺の目の高さに合わせてしゃがむと、頭をガシガシと撫でた。
「一緒においで。
うちにおいしいクルミパンがある。
腹が減ってるだろう?
たーんと食いなさいな」
その老人の見た目は怖かったが、口から出てくる言葉は優しかった。
俺は目に涙を浮かべて頷いた。
「うん…」
「はは、素直でいいねぇ…
ほれほれ、手をつないで。
一緒に行くよぉ…」
俺はそのまま老人に引かれて歩いた。
老人の手はしわくちゃではあったがーーー
今までに感じたことがないほど温かかった。