相棒の世界
「「………」」
静かな沈黙が走る。
ミラは俺の隣に座ったまま、ずっと黙っていた。
「……っ」
慰めの言葉でも考えているのだろうか。
ーーーそんなものはいらない。
いくら慰められても、励まされても、俺が役立たずであることには変わりはないんだ。
俺はーーー
「兎さん…」
ギュッ…
「っ!」
ふと、ミラが俺の右手を両手で優しく包んだ。
「絶対に…ニカさんを救ってください」
「っ…え…」
ミラはさらに手の力を強めた。
「ニカさんは連れ去られてしまいましたが…彼女は絶対に負けないと思います。
彼女は本当に強い人です。
そしてーーー心から兎さんを愛していました」
「っ…」
愛ーーー。
「ニカさん、兎さんがいないところでいつも私に言っていました。
『兎は私のものだ』と。
絶対にとるな、絶対に近づくな。
ニカさんはまるで私に説教をするみたいにいつも言っていました。
ーーー兎さん、あなたは本当に愛されているんです。
ニカさんに心から愛されているんです。
心から愛している存在だったからこそ、ニカさんはあの時、潔く仮面の男に抵抗しなかったのだと思います。
必ず兎さんはーーー自分を助けてくれると思って」