相棒の世界
ゴロゴロゴロ…
「ん?」
ふと、近くから何かが転がってくる音が聞こえてきた。
そしてそれは俺の足に当たる。
ーーーなんだ?
俺はそれを拾い上げ、両手で表面を触った。
「あ……」
それは一つのリンゴだった。
しかもこれはきっとーーー
真っ赤で甘いリンゴだ。
「ーーーあの」
「っ!」
ふと目の前から女性の声がし、俺は顔を上げた。
「さっきそれを落としてしまったんだが」
ーーーん?
どこかで聞いたことがあるような口調だと思った。
…気のせいか?
「ーーーああ、そうか…」
俺は不思議な気分になりながらも、手に持っていたリンゴを女性に差し出した。
「すまない」
女性はリンゴを手に取ると、おそらく片腕に持っているのであろう籠にそれをそっと入れた。
「では失礼す……あっ」
「…ん?」
ふと、急に女性が石のように固まった。
ーーーどうしたんだ?
俺が眉をひそめたがーーー
それとほぼ同時に彼女の小さな呟き声が聞こえてきたのだった。
「…鷹目?」