相棒の世界
「っ!」
聞こえてきた言葉に俺は目を丸くした。
そして自分が今、片手にシルクハットを持っていたことに気づくーーー。
「あっ!」
もしかしてこの女性は…
「シーナか!?」
「っ…!」
女性は口をギュッと結んだようにして黙り込むとーーー
タッタッタッターーー
その場から走り去ってしまった。
「なっ!」
俺はすぐに立ち上がると女性を追いかけた。
「ーーー兎さん!」
ふと背後からミラの声がしたかと思うとーーー
ズキッ!
「っ!!」
頭痛と同時に映像が頭の中に浮かび上がってきた。
これはミラのーーー不思議な力によるものだ。
「私がお供します!」
頭の中の視線の位置が高くなると、少しずつ俺に迫ってきた。
ミラが俺に近づいてきているのだ。
なるほど、そうか。
ミラを連れて行けば女性を追いかけやすくなるってわけか。
映像が俺の真後ろに来たと同時に、俺はミラに背を向けてしゃがみ込んだ。
「乗れ!」
「あ…」
「いいからはやくしろ!」
「っ…」
ミラが背中に乗ったのを確認すると、俺は頭の中の映像を頼りにしながら思い切り跳んだ。