相棒の世界




「っ!」



聞こえてきた言葉に俺は目を丸くした。




そして自分が今、片手にシルクハットを持っていたことに気づくーーー。




「あっ!」




もしかしてこの女性は…




「シーナか!?」



「っ…!」




女性は口をギュッと結んだようにして黙り込むとーーー




タッタッタッターーー




その場から走り去ってしまった。





「なっ!」



俺はすぐに立ち上がると女性を追いかけた。




「ーーー兎さん!」



ふと背後からミラの声がしたかと思うとーーー




ズキッ!



「っ!!」




頭痛と同時に映像が頭の中に浮かび上がってきた。



これはミラのーーー不思議な力によるものだ。




「私がお供します!」



頭の中の視線の位置が高くなると、少しずつ俺に迫ってきた。



ミラが俺に近づいてきているのだ。





なるほど、そうか。



ミラを連れて行けば女性を追いかけやすくなるってわけか。





映像が俺の真後ろに来たと同時に、俺はミラに背を向けてしゃがみ込んだ。



「乗れ!」



「あ…」



「いいからはやくしろ!」



「っ…」




ミラが背中に乗ったのを確認すると、俺は頭の中の映像を頼りにしながら思い切り跳んだ。






< 299 / 506 >

この作品をシェア

pagetop