相棒の世界
ーーー私は孤児(みなしご)だった。
赤ん坊の時に川の近くに捨てられて、散々たらい回しにされて。
そして最終的にたどり着いたのが今のおじさんの家だった。
正直、人を信用することなんてできなかった。
拾われては捨てられる。
また拾われてはーーー捨てられる。
そんな繰り返しの中を生きてきた私は、幸せなんて感じたことがなかった。
「…君、名前は?」
「………」
初めておじさんと出会った時、私はずっと口を閉じてそっぽを向いていた。
名前なんて今までつけられたこともなかったし、この人もどうせ私を捨てるのだろうと思っていたからーーー。
「うーん、じゃあ君は今日からシーナだ」
「っ…え?」
だから驚いたのだ。
名前をつけられた時は。
「…気に入らないか?
俺は可愛い名前だと思うんだけどな」
「っ……」
シーナ。
私の名前は…シーナ。
自分に名前がある、そう考えるとーーー
胸のドキドキがおさまらなかった。