相棒の世界
それは私が9歳の時だった。
パリーーーン!!
ある日突然、おじさんの家のガラス窓が勢いよく割られた。
なにがあったんだ!?
奥の部屋にいた私は急いで表に出る。
するとそこにはーーー
長くて太い木製の棒を肩に担いだ、一人の少年が立っていた。
薄汚れたボロボロの服に、砂まみれの顔。
しかし金髪の頭の上に乗った大きなシルクハットだけは、艶が出ているほどの新品ものだった。
「ーーー何すんだ!」
私は大声で叫んでいた。
大事なおじさんの家をよくも…!!
「はぁ?」
少年は気だるそうな顔で首を傾けると、棒の先を私に向けてきた。
「黙れ、ぶっ殺すぞ」
「っ!」
恐怖の欠片も見られない少年の瞳は、濁った緑色をしていた。
そんな目で睨みつけてくるものだから、私は思わず後ずさりをした。
「鷹目行くぞ!保安官が来た!」
ふと遠くからまた違う声が聞こえてきた。
「っ…」
少年はバツの悪そうな顔をすると、棒を振り下ろしてもう一度私を睨みつけると去っていった。
太陽の光に反射しシルクハットがピカッと輝く。
私はその後ろ姿が見えなくなるまで、ずっとその場に立ち尽くしていた。