相棒の世界
「ーーーえ?」
リンゴの皮を剥いていた手を止め目を丸くする。
「…本気か?」
「ああ、もちろん」
鷹目の声にふざけた色はなく、その話が真剣な話であることに気づく。
「………」
内心ものすごく戸惑っていた。
父親になる。
それが何を意味するのかは当然分かっていたからだ。
「ーーー子供が欲しい」
「っ!」
鷹目の口からその言葉が出てきた瞬間、リンゴが手から落ちた。
剥きかけのリンゴは中途半端な皮がついたまま床を転がってゆく。
「な、なに馬鹿なこと…」
「逃げないでくれ、シーナ」
鷹目は腰掛けていた椅子から立ち上がると、私に近づいてきた。
そして肩に手を置き、そのエメラルドグリーンの瞳で顔を見つめてくる。
「俺は本気だ」
「っ…どうして」
「どうしてもだ」
鷹目は私に優しく口づけすると、強く抱きしめてきた。
ドクドクドクドク
速まる心臓の音。
ドクドクドクドク
鷹目の心臓も今までにないくらいに速まっていた。
「…お前は頑固だな」
人の意見も聞かないでーーー
勝手に先走ってーーー
「シーナの前でしか頑固になれない」
鷹目はそう言って微笑むとーーー
その場で私を押し倒した。
シルクハットが落ちる。