相棒の世界




ーーー妊娠は大変な経験だった。



一日中続くつわりに体はクタクタになり、栄養を摂らねばならないのに全く食欲が出なかった。



鷹目は仕事が終わると睡眠よりも優先して私のもとに来た。



私のもとに来ては、ずっとそばで手を握ってくれていた。




目を瞑り、



首をコクッとさせながら。






つわりが落ち着いてくる時期になると、鷹目はまた兎と一緒にいることに専念し始めた。



どうしても一緒にいないといけない、そう言っていた。



その理由は教えてもらえなかったが、私は構わず鷹目を兎のもとにいさせた。



鷹目のことを信じていたから。







だんだん大きくなってくるお腹に手を当てる。



するとーーー




ビクッ



「あっ」




中の胎児が蹴飛ばしてきたのを感じた。





「ふっ、女の子のわりには元気すぎるのではないか?」




鷹目は腹の中の子供を女の子だと言っていた。



きっと透視を使って分かったのだろう。





「元気に生まれてこい」





ーーーこの世界に負けない、



ーーーこの圧力に負けない、



元気な元気な姿で、



生まれてこい。






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