相棒の世界
ーーーーーーーーー………
ーーーーー……
ーーー燃え盛る靴屋の前に、一人の男が立っていた。
黒い犬の仮面に、きっちりと整えられた黒いスーツ。
「………」
パチパチと音を立てながら燃え盛る家を、その男は黙って見つめていた。
「ーーー黒犬様」
ふと手下のような男が駆け寄ってきて、男に話しかけた。
「なんだ」
「………っ」
手下は気まずそうな顔をしている。
「ーーー逃げられました、少女にも、兎にも」
「ふっ」
男は鼻で笑うと、手下の方を向いた。
「まあ仕方がないことだ。
鷹目の娘が兎を見つけたところで2人とも消そうと思っていたところだがーーー
『鷹』と『兎』がまた出会ってしまったら、なかなか殺せないのは決まっている」
男は口元を緩ませた。
「ーーーだが、唯一の弱点がある。
とてつもなく痛い弱点が」
男はそう言うと、燃える家に背を向けて歩き始めた。
「やつらはーーー」
一人じゃ何もできないーーー