相棒の世界
「ハァ……」
葉巻を吸いたいところだが、手元にないことに余計に腹が立つ。
「兎、これ」
ニカが俺の前に剣を差し出したのを察知すると、俺は奪うようにしてとった。
「…勝手な真似をするんじゃない、ニカ。
言っただろ、俺の『隣』から離れるなと。
お前は『隣』の意味も分からない馬鹿なのか?」
「……っ…違う…」
ニカは小さな声で呟くと、俺の隣まで移動してきた。
足音がぴたりと止まる。
「これでいいか」
「ああ、絶対離れるな」
ーーーニカに変な真似をされちゃ困る。
もしも目の前にいたのがガイドンではなかったら、今の状況だと間違いなくニカは殺されていた。
ーーー不安にさせるんじゃない…まったく…
「ジョンさん、この娘は一体……」
ガイドンが恐る恐る口を開いた。
「ーーー昔の友人の娘だ。
親とそっくりで頭がおかしいやつなんだ。
許してくれガイドン」
「ちょっと…兎!」
ニカは俺のシャツをグッと掴んだ。
「誰が頭おかしいだと!?
私はこれでも幼少からたくさんの教育を受けているのだぞ!」
「教育をいくら受けたって、腐った脳みそには一つも入っていかないだろう」
「っ!!!」
ニカは俺のシャツを投げるようにして放した。
「ちっ…なんて口の悪い相棒だ。
お前がいいのは耳と鼻だけか?
ずいぶんと不便だな」
「……っ…」
ーーーこいつ、本当に腹が立つ……