相棒の世界




「やっと泣きやんだか?」



「泣いてなどいなかった」



「っ…はぁ?」



ニカは泣き止んだ後、目元をゴシゴシと擦るとまた口を窄めた。




「…はははっ」



本当にガキっていうのはどういう生き物なのか分からない。




「う、ん……」



俺は立ち上がると軽く伸びをした。



こんなに清々しい気分になれたのは久しぶりだ。




「帰るんじゃなかったのか?帰らないなら置いてくぞ、兎」



ニカはまた俺に悪態をつきながらも、ゆっくりと立ち上がった。



「置いていけるものなら置いていけ。お前はどうせ一人でここから下りられない」



「っ……」




俺に背を向けるニカ。



ニカのそばには嫌という程いたが、まさかこんなに背中が小さかったとは思わなかった。





「…ニカ」



「なんだ」



「どう思う?」



「なにをだ」




ニカの背中を見ながら、俺は自然と口元が緩んだ。




「ここから見える景色【世界】だ」



「っ?」




ニカは首を傾げた後、すぐさま辺りを見渡し始めた。



ビー玉のような瞳はキラキラと輝いている。








「ーーー美しいな」




ニカは俺の手を握った。




「世界って美しいな、兎」




「ああ、美しいよ」




俺はニカの手をガシッと握り返した。



森や町のさらにまた向こう側にある地平線を見つめながら、ふと鷹目の後ろ姿を思い出した。




「世界はーーー美しいんだ」




俺とニカはしばらくその場に立ち続け、地平線の彼方を見つめていた。




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