相棒の世界




ふと、ニカがやけに静かだと思って俺はそちらに顔を向けた。




「あ……」



するとそこにはーーー



ポカンと口を開けて、ハカゼの隣に立つシーナのことを見つめているニカがいた。



ニカの目に映るシーナは、目に涙をいっぱい浮かべている。




スタ、スタ…



ニカは急に歩き出した。



シーナから一つも目をそらすことなく、一歩一歩彼女に近づいていった。




そして目の前でピタッと止まるとーーー



ニカはポカンとした表情で言った。










「ーーー母さん?」



「っ!!」




シーナは目を大きく見開くと、



「…グスッ…うぅ……」



途端に目に溜まった涙を流し始め、目の前のニカをギュッと抱きしめた。



「あっ!」



ビックリするニカ。





「許してくれ……グスッ…ニカ…!!もうお前をーーー絶対に離したりしない…!!」



シーナはニカの体を強く強く抱きしめながら、声をあげて泣いていた。



ニカはそんなシーナのことをーーー




ギュッ…



穏やかな表情で抱きしめ返した。




「ああ、絶対離さないでくれ……母さん…」




抱きしめ合う二人の姿を見て、俺は安堵のため息をついた。




全然平気だったじゃないか、ニカ。



言っただろう?



母親はそういうものだって。




< 497 / 506 >

この作品をシェア

pagetop