相棒の世界
「ハーツ」
「あっ…」
後ろから声が聞こえて振り向くと、そこには扉のところに立っている父さんと母さんがいた。
父さんはがっしりと腕を組んでいて、母さんはその隣でにっこりと笑っている。
「薬を置いていこうとしたらしいな。ハカゼが言ってたぞ」
「っ!」
低い声に肩がビクッと反応する。
父さんは本気で怒るとニカ姉さんよりも怖いのだ。
「だ、だって嫌いだから…匂いが…」
「ふっ」
父さんは鼻で笑うと、俺にゆっくりと近づいてきた。
そして目の前に来ると、俺の背の高さに合わせて体を屈ませる。
「そんなものは持っても持たなくてもどっちでもいい」
「…え?」
目の前にある父さんの顔を見つめる。
エメラルドグリーンの瞳はニカ姉さんと全く同じ色だ。
そしてーーー俺とも。
「持ち物はお前自身の頭と心だけでいい」
「っ…頭と心?」
「ああ、そうだ。それさえあれば感じたことを頭で考え心にしまっておくことができるだろ」
「…なんだよそれ」
「ふっ、ジョークだ」