相棒の世界
「どうしてこの町を通ると決めた。
町中の方がまだ安全なはずだ」
ニカは後ろから俺の袖をギュッと握った。
「ハァ…」
俺は足を止めると、ニカに言い聞かせた。
「逆にどうして町中が安全だと分かるんだ?
まだ面と向かって『仮面の男』と戦ったことがないのに」
「…っ……」
「まだ力が定かではないものたちと殺り合うことは俺たちにとって一番危険だ。
得られる『情報』がどう考えたって少なすぎる。
だったら奴隷売り達からの攻撃を避けながら、北上していったほうがまだ安全だ。
奴隷売りが強いのは口だけだ。
腕はそうでもない。
ーーー偉そうなクソガキにはそう考える脳みそさえもないのか?」
「っ!!」
ニカは勢いよく俺の腕を投げ払うと、それからしばらくは黙っていた。
「………」
ふう、やっと黙ってくれた。
こんな風にずっと黙っていてくれれば、6歳の少女も多少はかわいいと思えるのだが…
奴隷町へ足を入れることは確かに危険だが、危険な町であるからこそ『仮面の男』たちが足を踏み入れない可能性が高いとも言える。
平和と危険、紙一重で遮られたギリギリのところを、俺たちはこれからたくさん歩むことになるかもしれない。
そのまま俺はガイドンに引かれて東側の奴隷町へと向かっていった。
相棒(ニカ)の目を借りて、なんとかスムーズにぬけられるといいのだがーーー