相棒の世界
「今はどういう状況だ、ガイドン」
前を歩くガイドンに小さな声で聞いた。
「だんだん町が見えてきやしたよ、ジョンさん。
もうすぐ小道に出ます」
「そうか」
さすがのガイドンも状況を察したのか、声を小さくしていた。
思っていたよりは利口なやつなのかもしれない。
「でも小道に何人か人が見られますね…。
大きな箱みたいなものを馬に引かせていやすよ」
「……っ!」
……奴隷売りか。
ある光景が頭に蘇ったーーー
『おい!はやく降りろ!!
母親までも殺されたいのか!!!』
闇の中に響く、どす黒い奴隷売りの声。
『母さんを返して!!
母さああああん!!!』
母と別れたあの瞬間。
ーーーギュッ
俺は拳を強く握った。
大人になった今であれば悲しくなることもないと思っていたがーーー
ーーーギュウ…
やはりいくつになっても心が砕けるような思いをした過去は忘れられないみたいだ。