相棒の世界
「どういうことだ?」
ニカがすぐさま聞き返してくると、俺は黙ってしゃがみこんだ。
そしてポケットから葉巻を取り出して、口に加える。
心の中のざわめきをどうしかしたかったのだ。
「ニカ、ガイドンのところへ行って火をもらってこい」
「質問に答えろ、兎」
「……っ……ちっ」
ーーーどこまでハキハキしたガキなんだ。
「はぁ……」
俺は加えていた葉巻を指に挟むと下に下ろした。
そして重たい口を開くーーー。
「与えられた『傷』によって、人間は時に窮地まで追い詰められてしまう。
そこまで追い詰められてしまった人間は、とうとう身動きができなくなるんだ」
「身動きができない?」
「ああ。
一歩踏み出せば恐怖が待っていると思い込んでしまうんだよ」
ゴクリ…
ニカは唾を飲み込んだ。
俺はまぶたを開けた。
やはり目の前には暗闇しか広がっていない。
「彼らはなーーー
みえない『恐怖』に縛り付けられているんだ」
かつての、『俺』のようにーーー