相棒の世界
ーーー母さんがいなくなって、どれだけの時間が経った頃だろうか。
おそらく一年が経った頃だったと思う。
「ーーーおい!」
「っ!」
「外に出ろ!」
奴隷売りは俺を外へと引きずり出すと、口を塞いで、手足を紐か何かできつく結んだ。
「………」
俺は今から何が起こるのか、もう分かっていた。
ーーー殺されるんだ。
なぜだかわからないが、もう心の決心はできていた。
むしろ、はやく楽にしてくれとさえ願っていた。
ーーー俺は最後の売れ残りとなっていた。
目が見えない俺を、誰も買おうとはしなかったのだ。
売れ残った者がどうされるか、俺ははっきりとは分かっていなかった。
だが、どうせ殺されるだろうとは予想がついていた。
奴隷売りにとって俺たち奴隷は『品』だ。
商品のリンゴが腐り果ててしまえばもちろん捨てる。
それと同じことで、奴隷たちも俺を『捨てる』だろうと思っていたのだ。