相棒の世界
***
「ーーー兎!」
「…っ…!」
ニカの声で、俺は我に返った。
どうやら嫌な過去を思い出してしまっていたようだーーー。
「どうしたんだ兎、急に黙り込むとは」
ニカは心配そうな声で言った。
そんなに人のことを心配できるなら、はじめからそうしろと言ってやりたかった。
「ーーーなんでもない。
少し思い出していただけだ…」
俺は葉巻をもう一度口に加えると、すぐさま立ち上がった。
「ガイドンのところまで連れて行け」
「なぜだ」
「火をもらいに行く」
今はとにかく葉巻を吸いたい。
心に生まれた動揺を、全て煙にして吐き出してしまいたい。
ーーーその後、ニカは俺の腕を引いてガイドンの元へと連れて行ってくれた。
ガイドンはものすごく心配していた。
「ニカさんとジョンさんが急に出て行っちまったもんで、一人で慌てていましたよ!!
二人ともご無事でよかった……」
涙声になるガイドン。
「心配させて悪かった。
ーーー今度はこいつ(ニカ)を縛り付けておこう」
「…っ…兎!」