相棒の世界





俺はガイドンからライターをもらうと、葉巻に火をつけた。



そして思い切り吸った。





「フゥーーー…」




少しだけ気持ちが落ち着いた。



やはり過去にとらわれることは怖い。










「ーーーニカ」



「なんだ」



「次は絶対に出て行ったりするんじゃない」



「……っ!」




チッ、と舌打ちをすると、ニカは俺から離れていった。



そして茂みに投げ捨ててあったリュックを背負う。




「ーーー分かった、兎。
お前にいなくなられたら私が困るからな。
黙って従おうじゃないか。

ーーー先を急ぐぞ」




ニカは一人で歩き始めた。




「あ、ちょっと!ニカさん!
待ってくださいよー!!
ーーーいきましょう!ジョンさん!」



「っ!」




俺はガイドンに腕を掴まれると、そのまま引かれていった。










「………」




引かれる間、俺の頭にはやはり奴隷時代の自分がいた。






ーーーニカには…



あんな思いをさせたくない。





もし下手をして奴隷売りに捕まればーーー



ニカはあの頃の俺みたいになるだろう。






それだけはどうしても避けたかった。




ニカを心から愛しているわけではないが、俺と同じ道を歩ませたくないとだけは思っていた。







俺は黙って腕を引かれ続けた。





ーーー母さんはどうしてるだろう…





ふとそんなことを思っていた。







< 87 / 506 >

この作品をシェア

pagetop