相棒の世界
あんなことを言ってしまったが、実際にはニカに感心しているところもあった。
『ーーー私が助ける』
奴隷売りに立ち向かっていったとき、確かにニカは恐怖を感じていたはずだ。
だがーーー…
ニカはそれを押し殺してまで、彼らを救おうとした。
もしかしたらニカは、『恐怖を感じる心』以上の『勇気』を持っているのかもしれない。
非常に認めがたいことだが、そこに関しては俺の方がまだガキだ。
ーーー街中に出ると、そこは朝の市場で賑わっていた。
人々の声と熱気で溢れかえっている。
「ジョンさん、何か買っておくものはありませんか!?
俺、行ってきますよ!!」
俺はガイドンに必要な食料と葉巻を頼んだ。
そして一本の短剣も。
「どうしてだ?」
「お前に持たせるためだ」
「っ!…私か!?」
ニカは鷹の目という武器を持ってはいるものの、自分の身を守る武器は装備していなかった。
万が一俺から離れてしまったときに自分の身を守れるようにと、俺は短剣を持たせることを決めたのだ。
「なんなら銃がよかったな」
「うるさい」
正直、銃は持たせたくなかった。
鷹の目を持つ者が銃を所有してしまえば、人を簡単に殺めることができてしまうからだ。
鷹目はそれで最強の殺し屋となった。
ーーーニカにはどうしても人殺しにはなってほしくなかったのだ。