【詩的小説短編集】=想い=
携帯電話
「ほれ!」

突然、渡された携帯。

「俺、いま手が離せないから、お前が代わりに話せよ」


ドギマギする心臓。


私の手の中には、大好きな貴方の携帯電話。

めんどくさがりの貴方の事だから、私に見られても差し支えない情報しか入ってないよね……


でも、いつも貴方が使ってるから、なんとなく無機質な携帯からも、温もりが感じられる。


同じ場所に耳を当てる。

同じ場所に口元を置く。


内心はバクバクなのに、顔はクールなままでいる私。


いつも、冗談ばかり言っては、笑い転げてる二人。


男女の粋を越えての会話も平気。


気が付いているのかな……

こんなに切ない私がいること……


こんなに、貴方の事でいっぱいな気持ちに……


耳元で、定期的に流れるコール。


「ごめん、相手がでないよ!」


ちょっとだけムッとした振りをして、携帯を差し出した。


「あいつ、なにやってんだ?」


相手は、私の親友。


そして、貴方の彼女候補。


「いいじゃん!今日は二人で遊ぼうよ♪」


「お前と二人じゃ、味気ねーだろ?」


解ってる…


私なんて相手にされないのは……


私とじゃ、何も始まらない。


貴方の心を動かせない。


だけど、さっきまで私の手の中にあった携帯電話のように、少しでも、貴方の傍にいたい。


    =fin=



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