【詩的小説短編集】=想い=
もう少し……

「ねぇ、ねぇ。あの娘、最近、綺麗になったと思わない?」


通りすがりに聞こえた、同級生の噂話。


彼女達の目線の先には、ロングストレートの目立たないクラスメイト。


『ふーん、確かに……』


でも、その時はあまり気にしていなかった。


数日後………


私は、ぶらりと街に買い物に出た。


「あれ?」


とあるカフェテラスで足が止まる。


『あの娘だ』


よく見るとあの時の噂の彼女が座っていた。


「ん?」


目の前に見慣れた顔があり、二人は見つめ合ってるではないか。


『うそ?!なんで……?』


そこには憧れのあの男性(ヒト)が………。


私は急いで中に入り、二人に声をかけて彼の斜め前に座った。


彼女はちょっと複雑な表情だけど、かまうことじゃない。


「二人も偶然に会ったの?」


私の熱い視線を感じたのか問い掛けに彼はそうなんだと答えた。


『違うくせに……』


その日から学校でも彼とよく目が合うようになった。


そして、しばらくすると彼女の自慢のロングストレートがショートボブになっていた。


「どうやら、男にフラれたらしいよ」


みんなが囁く。


『チャンスかも……』

私は焦らないように彼に接近した。


「あのさ、アドレス…教えてもらえる?」


彼からの誘い。


「私、メル友って少なくないのよね」


上目使いでそう答える。


『絶対に、私から告白なんかしない』


そう強く思いながら、好きだ光線は忘れない。


「バス、行っちゃって……」


帰り道のバス停は、時間を合わせて彼を待った。


彼もまんざらじゃない笑顔で、バスに乗り込む。


もう少し……。


もう少しで、彼は私に告白する……。



=fin=




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