【詩的小説短編集】=想い=
空虚

あの頃、眠らない街のハズレにある廃墟ビルに僕たちは秘密基地を作った。


まだ子どもだけど、大人でいたい15才の冬は毛布一枚ではとても寒くて心までどこかに落としてしまいそうだった。



でも、僕らはそこが大好きだったんだ。


大人たちに邪魔されない僕らだけの空間。


壁のいたずら書きも、寄せ集めで作った椅子も、牛乳ビンに飾った花もみんなみんな宝物だったんだ。


それを僕が、僕自身がぶち壊した。


もう誰も信じられない。

心の闇はあっと言う間に大きくなり、掴めない真実にいつも手を伸ばしていた。


君達が言った「気にするな。お前は悪くない」は、「お前どうしようもないな。あきらめろ」と僕の耳に流れた。


やり直せない真実と偽りに今、取り壊されるこの場所に立つ。


あの落書きの壁は崩れ落ち、椅子は既に撤去されたのだろう。


大人と呼ばれる年になり、彼らとはもう別々の人生を歩いている。


目を閉じると浮かぶあの時の笑い声。


信じていた友達に大好きなあの娘を奪われたあの日さえも今なら許せるような気がする。


「ふっ、僕も年をとったものだ……」


建物が崩れ行くその場を背に、そっとその場を離れた。


やはり、心の精算はこの場所だったのだ。


北風が思い出を根こそぎ見上げた空へと誘う。


君達と過ごした時間が、辛いことにも耐え抜く力を与えてくれたんだ。


そう思える僕でいたい。


ありがとう。



僕の青春………


=fin=


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