【詩的小説短編集】=想い=
呼び出し
『いまさぁ、英輔(エイスケ)の家にいるから………』
突然、彼からのお呼び出し。
私は自分の用事で手一杯なのに、彼の為に全てをキャンセルして鏡の前に座った。
久しぶりに会うから……と、身嗜みもしっかりとチェック入れて……
とっておきの洋服を用意してみたり………
そしてもちろん、彼から貰ったネックレスは忘れない。
鏡の中の自分に向ける笑顔………
何故か目が笑ってない……
『たしか…英輔さんの家って、車で2時間以上……
今は4時を回ったとこだから、7時近くになるかな』
【俺、お前に会いたいんだよ】
そんな甘い言葉に、素直に従う自分が虚しい。
「なんでこんなに好きなんだろ……」
声に出した時、化粧を仕立ての頬に涙がつたう。
また、携帯が鳴る。
『おい、大丈夫か?来れるか?』
うん、と答えると、気をつけろよ。と電話は切れた。
車のKeyを持ち、家を出る。
一人の車内は、色んな思考ですぐにいっぱいになった。
1番考えたくない思い。
『私って、都合のいい女?』
ブンブンと首を振って、ハンドルを握り直す。
携帯のメールを知らせる音が鳴る。
赤信号で、そっと開くと『待ってるから』の文字。
会うと誰よりも優しい彼。
私の不安は彼の笑顔でクリアーされた。
好きだから、辛くても今はあなたの傍にいたい……
=fin=