俺様社長に振り回されるのも悪くない


久しぶりに会う名取さん
……一人だった


「これ、久里ちゃんのでしょ」


そう言って破れた画面の携帯を渡してくれた


『……もう使えないですね』


「そうだね…明日にでも新しいの取り替えないとね。あ、遥には言っとー」


遥の名前が出た途端、私は声を出した


『やめてっ!』


「え?」


『今日……私に会ったことは言わないでください』


「けど、久里ちゃん…前にも行ったけど仕事のー」


『わかってます!』

わかってた……
社長のあの笑顔を見るまでは……



『名取さん……社長のこと、よろしくお願いします』


そう言って私はその場から走り出した
どこに行けばいいかわからない


名取さんが呼ぶ声がする
全てを吐き出した私に
まともに走る体力なんて
有り余ってなかった


「久里ちゃん!久里ちゃん!」
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