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「書道部 楽しい?」
廊下の手洗い場で濡らしたタオルで
私のほっぺについた墨を
のけてくれながらそう聞いてきた。
「うん?楽しいよ?」
「そっか~」
そしたら墨をとってくれてる
タオルの擦れる力が強くなった。
「痛い 痛いよ!」
「あ、ごめんごめん(笑)
なかなかとれなくて…でもとれた」
「よかったーありがと!」
そう言うと 翔くんは私の頭に
タオルを乗っけて先を歩いた。
私はそれに追いつこうとタオルを
抑えて追いかけた。
「洗っといてよ?」
「ええ?洗うの?」
「うん」
そう言って私の手を握った。
私も握り返して グラウンドに出た。
私の目は自然と書道室の窓にいく
大ちゃんの姿が見えなくて
少しさみしく感じている。
その気持ちを私は気づかないふりをして
翔くんの手を強く握って
門に向かって走った。