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「翔ちゃんと
うまくやってるみたいでよかった」

窓の外を見ながら
一ノ瀬くんがそう呟いた。

「え?なんで?」

「ん?まぁちょっとね。
だけどさっきの見て安心したわ」

そう言うと
一ノ瀬くんは自分のリュックをせおった

「えっ?帰るの?」

「うん!だって大ちゃん出てこないし
もう帰るわ これからデートだし~♡」

「あーそ。
仲良さそうでなによりです。」

「お前らだってそうだろ?」

少し悲しそうな顔をちらりと見せた
かと思ったけどすぐ笑顔になった
一ノ瀬くんは嬉しそうに扉を開け、
バンっと音をさせて 扉を閉めた。

何の音もしなくなった 書道室。

遠くから吹奏楽部の演奏と
運動部の練習の声が聞こえてくる。

私は一人席について 筆を手に取った。

真っ白な紙に黒い染みが出来た。
それは涙が落ちたみたいで

そのままにしておくと
どんどん墨が落ちてきて
真っ白な紙が黒に染まっていく
自分の心のように思えてくる。

いつからだっけ?
一緒にいるだけで物足りなくなったのは

いつからだっけ?
翔の事を目で追いかけなくなったのは

いつからだっけ?
部活に来るのが楽しみで
しかたなくたったのは

いつからだっけ?
私の心が汚れはじめたのは

ねぇ…いつから?

そしたら本当の涙が目から落ちてきて
紙にポツポツと音を立てて落ちていく。

止まんなくて 抑えても抑えても
涙がこぼれてくる。

私はたまらなくなって立ち上がった。
そして大ちゃんの部屋の扉を叩いた。
それは部屋に閉じ込められた
子供みたいで。
こんなに必死になってる自分に引いた。
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