院内恋愛(旧:恋の階段*タイトル変更しました)
蒼介は、1年後には大学病院に戻ってしまい、その後出会うことはないままに、4年の月日が流れた…

私は、市立病院の看護師として働いて5年目を迎えた。学生時代を含めると、8年目。

大きな病院のはずだけれど、ほとんどのスタッフは顔見知り。「真美ちゃん」、「真美さん」と呼ばれ、院長や事務長、看護部長など上層部からも時々声をかけてもらえる。というか、8年前は、看護部長も勤務していた病棟の師長だったし、月日は流れたのだ。

変わってきたのは、年々、「真美さん」と呼ばれることが増えてきたことと、責任の重さだろうか…。私の大事な居場所である病院だけれど、時々ちょっと息苦しいのも本音。


蒼介は、今年の4月に、大学病院の医局から、市立病院の内科医として派遣されてきた。
4月当初から、ナースの更衣室では、話題にのぼっていた。「海藤先生かっこいい」と。

私は、整形外科病棟に勤務していたので、実際に会うことはなかったけれど、あの海藤先生だろうという認識はあった。

新人スタッフも少しずつ落ち着き始めた4月後半。病棟でリーダー業務が増えた私は、急な入院に対応していたせいで、遅めの昼休みを食堂で過ごしていた。目の前のうどんはなかなか減らない。最近の寝不足で、食欲も落ちていることは分かっていた。

2人掛けの席に座った私の前に、定食のトレイが置かれた。

「おつかれさまです。ここいい?」

その声に、顔を上げると、白衣をまとった蒼介がいた。
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