院内恋愛(旧:恋の階段*タイトル変更しました)
そして、数日後の金曜日、日勤帯の残業を終えた職員専用出口。週末ということもあり、日勤のスタッフは、もうほとんど帰ってしまったのか、ロッカー室にも人気はなかった。

向かいのコンビニへダッシュするのをためらうほどの雨が降っていた。

もうすぐゴールデンウィークで、初夏のような陽気も増えてきたとはいえ、夜の雨は寒い。朝、だるさが抜けないままに、天気予報も気にすることなく、遅刻しないようにするのが精一杯で、傘を持たずに来てしまった。ロッカーに置いてあった折り畳み傘もこの間の雨で、持ち帰ってしまった。

そこへ、傘を手にした蒼介が出てきた。

「おつかれさま。傘ないの?」

「おつかれさまです。…持ってきてなくて。」

「車だし、送ろうか?」

つい期待はしてしまっていたけれど、傘を買うためにコンビニまで入れてもらえればというレベルだった。

「コンビニまで…」
と言った言葉はスルーされたらしく…

「夕飯食べた?」
「まだですが…」
「予定なければ、一緒にどう?」
「…はい。」

かっこいいと話題の先生と食事に行くなんてと思いながらも、あの久々にリラックスした空気感も味わいたくて、お言葉に甘えることにした。

そして、楽しい会話に食が進み、お腹が満たされた。

寝たいのだけれど眠れない日々。不眠について、ナースとしての知識、ネットで検索、つい買ってしまった「猫のようにぐっすり眠る本」を踏まえ、様々な方法を試したけれど、効果はいまいちだった。

あと試していないのは、睡眠薬と、「大人の夜の時間」が眠りに効果的という、方法くらいになっていた。

そして、口をついて出てしまった、帰りの車中のお誘い(?)。

そんな今に至るまでの状況を、ベッドで、つらつらと思い返していた。


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