*完結* 星野と高瀬のばあい
「あ、僕このキーマカレーのパイと、ラズベリーと蜂蜜のやつください。
星野もあと1コは甘いのがいいんじゃない」

リンゴとクリームチーズのパイなんかおすすめです、店員が高瀬ににこやかに話しかける。

会ったばかりの高瀬に自然に愛想をふりまきながら、しおさの存在は空気にすることができる。
うらやましいような、苛立つような。

「だって」高瀬がしおさに向き直る。

じゃあそれで、ぽそっとつぶやく。自分はいま仏頂面をしていることだろう。

飲み物をそれぞれ選ぶと、「会計は一緒で」と高瀬がすばやく告げる。


「あたし払うよ」
席についてからそう言った。レジ前で会計を譲り合っているカップルなんて、見苦しくてしょうがないだろう。
< 105 / 125 >

この作品をシェア

pagetop