もしも最後の願いが魔法で叶えられたなら
<第一幕>少女の願い
ある星空の見える夜のことでした。桜が満開に咲く時期、ある女の子が小さな病院で産まれました。女の子は小さな小さな手を母に握られながら笑っていました。それを見た父は女の子に名前を付けました。その名は「星桜(せいら)」。とても美しい子でした。
10年後…。その日は熱い夏だった。夏休みに海に行こうとしていた家族に不幸な出来事が起こった。突然、前のトラックがこちらに激突してきた。激しい衝撃音と母の言葉を最後に星桜は気を失った。「生きて…。」
「せ…星…星桜…!」気がつくと灯りの灯る部屋にいた。こちらを男の子が覗み込みながら訴えかけていた。「悠…也…?」その男の子は星桜の幼馴染の悠也だった。「良かった…。もう、心配掛けさせるんじゃねーよ…。お前が死んだら、俺…。」悠也は涙を流しながら言った。その時、やっと記憶が蘇えった。「お父さん…お母さんは…?」悠也は俯きながら黙ってしまった。その時、看護婦さんが病室に入ってきて、耳うちで伝えたその言葉に意識が朦朧とするほどだった。その後霊安室で眠る母と父を見た。あっけない死だった。こんなにも人は脆いものなのかと愕然とした。でもそこにいる父母は少し笑っているようだった。まるで、最愛の娘を守れた事を誇りに思っているようだった。その日を境に、星桜は悠也以外の人に心を開けなくなってしまった。次の日。退院をした星桜は悠也の親にひきとられた。星桜と悠也の首元には星桜の母と父の指輪の付いたネックレスがそれぞれついていた。星桜はもう誰も傷つけまいと心に誓い、そう願ったのでした。