魔法使いの一日
少年は更に強い力で両肩を掴んだ。そのあまりの力の強さに思わず顔が歪んでしまう。
「痛っ……痛い。離して、……離してよ。っ……少年!!」
私が大声で叫ぶと、少年は我に返り両肩を掴んでいた手を離す。
「っ……悪い」
少年はそれだけ言うと、自分の部屋に戻っていった。私はと言うと、その場にへなへなと座り込んでしまった。
「なっ……何なのよ、あいつ」
何もあそこまで怒らなくてもいいじゃない。あんたは魔法使いじゃないんだから。
でも、普段のあいつからは考えられない異常な反応。まるで、魔法使いである自分のプライドを傷つけられたような……。え?
ちょっと待って、何この考え。まるであいつが本物の魔法使いみたいじゃない。そんな、まさか―――
私は暫らく考えると、今の考えを否定するために何度も何度も首を横に振った。
そんな漫画みたいな非現実的なこと有るわけ無いじゃない。私は今の考えを頭から放り出し、しまいかけだった食料を冷蔵庫にしまっていった。
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