魔法使いの一日
それは、


「……オイ、このクソ犬」


亜梨珠が、ケルベロスの牙を掴んで押さえていたからだ。しかも片手で。


「てめぇ何勝手な解釈してコイツ食おうとしてんだ? あ゛ぁ?」


亜梨珠がココまで怪力だったとは……そう驚くと同時に、違和感を感じた。


コイツ、こんなに口悪かったか? いや、確かに普段から口は悪いけど、ここまで酷くはなかった気が……


「ったく。死因が犬に食われましたってシャレになんねーぞ。大体オレが嫌だね」

『グッ…キ、キサマ……!』

「何だよ。あーそうそう、言い忘れてたけどよ。てめぇいい加減そのクセェ口臭と鼻息止めやがれウザってーんだよ!!」


ドンッ!


そう怒鳴るや否や、ケルベロスは牙の一本を折られそして衝撃波のようなもので吹きとばれれた。


ちょっ、オイ待て! 今の…明らかに魔法じゃないか!!? 何で普通の人間の亜梨珠が魔法なんて使えるんだ!!?


ゆっくりと立ち上がり、だるそうに肩を回す亜梨珠を凝視する。てか…コイツ、本当に亜梨珠なのか……?


「亜梨珠……?」


恐る恐る名前を呼ぶと、こっちに振り返った。


「あ?」


その亜梨珠を見て、俺は更に驚いた。







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