魔法使いの一日
「はぁ〜……」
私の口から本日何度目かのため息が零れる。
あれから謝ろう謝ろうと思っていたのに、さり気なく近づいたら普通に避けられるし、話し掛けようとしたら話し掛けるなみたいなオーラを放つし。そんなこんなで、謝るどころか話し掛けることすらできていない。
私はスーパーの袋を持っている右腕をブラブラと振りながらいろいろと考えた。真っ先に、ずっとこのままなのかなぁ、なんてことを考えてしまいまたため息が出てしまった。
そして再びため息をつき、頭を下に向けながらフラフラと歩いていると
ゴンッ!
私の頭と誰かの顎が勢い良くぶつかってしまった。何で顎にぶつかったのが分かったかと言うと、まぁその場の成り行きってことで。
てか、私って中々の石頭だから相手が無事か心配。
「痛た……。あ、すっすみません、ボーッとしていて! 大丈夫ですか!?」
「いや……大丈夫じゃないけど、大丈夫」
相手は矛盾した答えを出し、顎を擦りながら顔を上げた。するとその相手は
「って、少年?!」
ぶつかった相手はなんと少年だった。
やっと喋れる機会がやってきたと思ったのも束の間。少年はぶつかった相手が私だと知ると、とても驚いた顔と会いたくなかったというような顔をし、その場から逃げようとした。
私はこの機会を逃がしたくなくて、逃げようとする少年の服の裾を無意識に掴んだ。
「ちょっと……。逃げることは、無いんじゃないかな」
少年は逃げられないことを覚(さとる)と、はぁっとため息をつき私と向き合った。
「で? 何か用か?」
いや、用があるから呼び止めたんじゃん。てかそんなあからさまに嫌な顔しないでよ。
「えっと……んと」
謝るんだ!と心の中で何度思っていても、中々口から言葉が出てこない。
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