魔法使いの一日
少年は暫らく俯いたままだったが、ゆっくりと顔を上げ
「……分かった。俺の命、お前にくれてやる。だから、亜梨珠を放せ」
一瞬、少年が何を言っているのか分からなかった。何言ってんの? この条件自体がまともじゃないんだよ? 私達を生きて返すわけ無いじゃん。だったら、ほんの少しだけども助かる確率のある方の条件を選びなよ!
私の怒りは頂点に達し、その怒りの矛先はヴァルボーネの腕に向けられた。
私を絞め上げている腕を思いっきり噛み、ヴァルボーネが怯んだ隙に首を締め付けていた腕を退かし、手に持っていた少年の魔力を奪う。
「女ぁ、よくもやってくれたな!! 魔力を返せ!!」
地面に突き刺してあった剣を抜き、恐ろしい険相をしこちらに向かってくるヴァルボーネのお腹に蹴りを一発食らわせた。
ヴァルボーネはあまりの痛さでその場に蹲り、その間に少年の元へ向かう。
「おっおい、亜梨珠お前……」
少年は私の行動に唖然とした様子だった。それもそうだろう。剣を振り回しながら襲ってきた奴に怯みもせず、しかも蹴りを喰らわせたのだから。
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