魔法使いの一日
「ヴァルボーネ様!」
出てきたのは老人だった。一瞬味方かと思ったけど、ヴァルボーネ様なんて言った時点で敵だと判断した。
「お前は……ドマーニ!」
少年は、その老人の名前を口にする。どうやら知っているようだ。
老人は私達に気付くとひと睨みし、視線をまたヴァルボーネに戻した。
「ヴァルボーネ様、此処は一旦退きましょう」
「何を言う! それではまるで俺が負けたみたいでは」
「自ら身を退くことも大事でございます。それに、ヴァルボーネ様は負けてはおりません」
ドマーニが先程よりも強い口調で言うと、ヴァルボーネはまだ納得しきれていないようだったが、それ以上何も言わなかった。
そしてドマーニはもう一度こっちを向き
「……ふん。魔力を取り戻したか。だが、お前がどうあがこうともう遅いことだ」
何やら意味有りな言葉を残し、ヴァルボーネを支えそのまま消えるように去っていった。
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