魔法使いの一日

三.名前は?



カチッコチッ


さっきから時計の秒針の音だけが煩いくらい部屋に響いている。それほどまで静かと言うわけである。


その空間のなか、私と少年は机を挟み向かうようにして座っている。


「それじゃ、すべてを話そう……」

「……うん」


少年は深呼吸をすると、静かに話始めた。


「実は俺、昔の記憶が無いんです。所謂、記憶喪失ってやつで――んがっ!!」


私は少年の顎にアッパーを喰らわせ、その勢いで仰向けになったところを踏み付けた。


「おいコラ。何態とらしいボケかましとんじゃ。記憶喪失? そりゃ大変なことで。でもさぁ、あのおっさんと老人、明らかにあんたの知ってる人達だったよね。しかもつい最近知り合いましたじゃなくて昔から知っていたような口振りだったし。その前の話は超能力。あれが超能力のわけないでしょ。ねぇ少年、私のこと馬鹿にしてるの?」


そう。少年はさっきから何かくだらないことで今までのことを誤魔化そうとしているのだ。


私がにっこりと微笑みかけると、少年の顔はみるみるうちに青くなっていった。







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